気分障害

うつ病・うつ状態

 うつ病は1年間で男性100人に1人、女性100人に3人が新たに発症するといわれ、一般内科受診者の少なくとも5~6%、あるいはそれ以上がうつ病圏内の患者さんであると言われています。最近では、1か月以上の欠勤者の15%がメンタルヘルス不調で欠勤しており、そのうちの80%がうつ病といわれています(井上,2005)。

うつ病は、早期の発見と有効な治療により回復する見込みが高い疾患です。しかし、同時に、誤った対処の仕方や診断、治療が遅れることで症状が悪化することもあるため、注意が必要です。実際、うつになった方の半数以上が専門的治療を受けていないともいわれています。うつかな、と思ったらできるだけ早く、専門医を受診して頂きたく思います。

主な症状は、気分が沈む、(もともと好きだったことにさえ)興味・関心が持てない、ぐっすり眠れない、頭がうまく回らない、記憶が悪くなる、などがあります。これらの症状をご本人が自覚する場合もありますが、このような症状の結果、勤怠が悪い、仕事のパフォーマンスが極端に低下しているなどを上司・同僚から指摘されて初めて疑われることも多いです。

治療方法は、主に薬物療法が考えられます。近年の抗うつ薬の開発は目覚ましく、従来薬よりも副作用が少なく効き目が強いものも多くあります。薬以外では、心理社会的な治療方法として、認知行動療法、対人関係療法、精神分析療法などもあります。たとえば、認知行動療法では、歪んだ非機能的な認知を見つめなおし、柔軟で肯定的な考え方に変容させるよう取り組みます。また、対人関係療法では、患者さんが抱えている対人関係における問題の一つに注目し、交流と社会訓練を通じて不適応パターンを明らかにし、新たな関係性を学習するというアプローチをとります

躁うつ病(双極性障害)

 この病気は、思春期から老年期までの幅広い年齢層で発症し、うつと躁の再発を繰り返すものです。人口の1~2%の有病率を持つと同時に、精神障害の中では自殺企図が多いと言われ、非常に注意が必要です。うつ状態の時の症状は前述の通りですが、躁状態になると、本人に自覚がない一方で、過度な高揚感、万能感から活発になり過ぎ、ときに社会的逸脱行動が酷く社内や地域でトラブルや事件を起こすことも珍しくありません。

治療方法は、うつ状態ではうつ病に準ずる治療がなされます。しかし、この病気は躁転する危険性が常にあるため、気分安定薬をしっかりと服用する必要があります。また、躁状態をセルフコントロールできるようになることが大きな目標となるため、心理社会教育(疾病理解、予兆の早期発見、気分の自己評価、服薬の自己管理、など)が必須です。

参考文献:
川上憲人、堤明純:職場におけるメンタルヘルスのスペシャリストブック(培風館)